平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

初ゼミと『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』。

今日から春学期が始まった。最初の授業は3年ゼミ。ゼミのメンバーが初めて顔を合わせる時間は、毎年のことながら少なくない緊張がともなう。ゼミ選択の際に話をしている学生がほとんどだから、どういう分野に興味があるのか、将来はどのような道に進みたいのかなど、おぼろげながらに把握しているものの、学生同士の関係性まではわからない。プライベートで一緒に遊ぶほど親しくしている者同士もいれば、なかにはほとんど話したことがない者同士もいて、全体の親密さはいざ集まってみないとわからない。人と人とがよりよい関係性を築くためには初回が肝心で、これはなにもゼミに限ったことではないけれども、どのようにスタートするかでその後の展開が決定づけられることが多い。だから毎年、ちょっと緊張するのである。

 

一人ずつ自己紹介をしてもらって、この僕の心配は杞憂に終わった。ひとりひとりがユーモアを交えながらリラックスして自分語りをしていて、安堵した。すでに一定以上の親密さが形成されていて、アイスブレイクする必要などほとんどなかった。卒業までの2年間をじっくり時間をかけて学ぶことのできるゼミという「場」が立ち上がったことに、ファシリテーター役を務める僕としてとてもうれしく思う。

 

さて、今日は佐伯夕利子『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(小学館新書)を読了した。2月の終わりにこの本を企画・構成した島沢優子さんから献本いただき、満を持して読み終えた。抜群にオモシロかった。著者の佐伯さんは、2003年にスペインリーグで女性初の監督に就任し、その後の活躍から2007年には『ニューズウィーク日本版』で「世界が認めた日本人女性100人」にノミネートされた方。現在はJリーグの常勤理事もされている。

 

この本では、2008年から務めているビジャレアルCFでの実践報告を中心にスポーツ教育の真髄が語られていて、僭越ながら僕が理想として思い描いていたスポーツ指導のあり方がここにあると思った。フットボール指導について書かれてあるけれど、その数々の知見は競技を問わず汎用性があると僕は思う。僕のなかでは池上正さんにもつながる佐伯さんのスポーツ指導論は、暴力的な言動がともなう指導が今もなお続いている日本では、必読の書だと思う。

 

詳しくはまた追って書くのでお楽しみに。それではみなさま今日もお疲れさまでした。