平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

ラグフェスでラクロス部がタッチフット。

カラダが熱い。
正確には両手の肘から先と両足の太もも途中から足首までが火照っている。
数日前と比べると誰の手なのかわからなくなるほど日に焼けた。
なぜ焼けたのかというと、コベルコラグビーフェスティバルに足を運んで、
朝の9時から17時までグランドで走ったり眺めたりしていたからである。

午前中は日差しが照りつけて肌がじりじりするほどだった。
でも昼過ぎになって少し曇ってくれたので何とか体力は続いた。
もしも一日を通して太陽が燦々と輝いていたならば、
おそらく今頃はグッタリとしてベッドに横たわっているだろうと思う。
カラダはまだじんわりと火照っているものの大きな疲労感はなく、
晩御飯もしっかりと食べることができたので、まだまだ僕も若いということだ。

ファン感謝イベントの「コベルコラグビーフェスティバル」では、
タッチフット大会が毎年恒例となっている。
あるときにふと「ラクロス部の学生たちはタッチフットせえへんかなあ」と思い立って彼女たちに打診してみたところ、「やってみたい!」と即座の返答。
うん、その積極性と好奇心がものすごくよろしい、と自らの提案を快諾してくれたことに気をよくし、意気揚々と本日のフェスタで彼女たちを引率したのであった。

ラクロス部なのでもちろんタッチフットなどしたことがなく、中には今日初めてボールに触れる学生たちもいるわけである。
初心者がいる、というよりもほとんどがタッチフット未経験であることを知りながら、彼女たちに出場してみないかと声を掛けたのには理由がある。

タッチフット大会に参加するチームは、当然のことながらほとんどがラグビー経験者で構成されている。
中にはなかなか鋭いステップを踏んだり、足の速い選手もいたりして、いわゆるマジでやりまっせ的なチームは「チャンピオン大会」にエントリーする。
優勝チームには、豪華な賞品に加えて、大会終了後にエキシビジョンマッチとして神戸製鋼ラグビー部の面々との試合も用意されている。

それに対して、女性や子どもを含めた未経験者でも参加できるようにと、ルールを柔らかくした大会も並行して行われている。
そうした「エンジョイ大会」では、各チームに2人以上は女性か小学生以下の子どもを加えなければならない。そして、身体接触などの激しいプレーを繰り返す選手には厳しくペナライズされるという配慮も為されている。

このエンジョイ大会の方なら、彼女たちほどの運動能力があれば十分に参加できるし、おそらくは楽しく行えるだろうと考えたのである。

最初の2試合は負けた。

というのも、まだ頭でルールを理解している段階の彼女たちは、「前にパスしてはいけない」というラグビー独特のルールに対応することができず、相手が近づいてくるとどうしても反射的に味方にパスを放ってしまうのである。
せっかく得た攻撃権がすぐに相手に移ってしまうのだから勝てるはずもない。

でもね、自分がタッチされないようにと味方選手にパスをするという「反射的な」動きは、ラクロスに親しむ彼女たちにとっては必然なのである。
日々の練習で身につけたラクロス的な身体運用が、たとえタッチフットをしていても無意識に表出するというのは、彼女たちの身体能力の高さを物語っている。
うまくなろうとして主体的に練習に取り組んでいるがゆえに、同じゴール型の競技をしたときには身体化された動きが「つい」出てしまうのである。
「身体化」されているのだからその動きが「つい」出るのは当然である。

3試合目からは負ければ終わりのトーナメント戦。
最初の2試合に負けたことで敗者復活戦にノミネートされ、
しかも裏のトーナメントを戦うことになった。
負ければ試合が終わるという現実がそう思わせたこともあろう。
彼女たちの「やっぱり勝ちたい!」という声に後押しされて、僕の中の負けず嫌い根性にすっかりと火がついてしまい、神戸製鋼での同期だったクワと昨年までSCIX高校生だったナガハラという2人の助っ人と共に「大人げなく」プレーした。

そしたら、あれよあれよと決勝まで勝ち進んでしまった(しまった?)。
たしかに僕をはじめとした助っ人陣がムキになって走ったシーンは散見されたけれど、3人だけで勝てるほどタッチフットは甘くない。
決勝を含めた6試合を戦う中で、彼女たちが徐々に上手くなっていったからこそ勝つことができたのである。
そんな彼女たちの成長ぶりを目の当たりにして僕はじんわりとうれしくなった。

まず、前にパスを放るという反則をほとんどしなくなった。
以前までなら慌ててパスをしてしまっていた状況に置かれてもボールをキープしていたり、たとえパスをしたとしても自分より後ろに放っていた。
明らかに彼女たちの動きには変化が兆していることに気がついた。

思い返してみれば僕は彼女たちにタッチフットの何たるかなどを教えたことなどなく、言うなればただルールを伝えただけである。
彼女たちはそのルールを理解し、どのようにプレーすればいいのかについての想像を膨らましたあとは、実際に試合をこなすにつれてどういったプレーが効果的であり、また効果的でないかを吸収しながらプレーしていった。
そうすることによって身体化された動きを少しずつ微調整してみせたのである。

「よくわからん」と諦めても「わからんでもええわ」と投げやってみることもできたはずなのに、そうはせずに最後まで「身体」でわかろうとしていたあの姿勢は、これまでコーチに頼ることなく自分たちだけで話し合って活動してきたがゆえに培われた主体性によるものであると、僕は思う。

ちなみに最後の試合は負けてしまったのであるが、試合の後に「来年はもっと練習してから試合に臨みたい」と口を揃える彼女たちがいた。
彼女たちのそうした姿勢に触れると、ついつい身を乗り出してしまうのである。

来年こそは優勝しよう。
僕ももっと走り込んでおこうと思います。

それにしても今日はアツイ一日であった。