平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「関西学院、快進撃!」身体観測第60回目。

 ラグビーは番狂わせの少ないスポーツであると言われる。しかしながら今年の関西大学Aリーグは、多くのラグビーファンの予想を裏切る試合が続いている。関西学院大同志社大、天理大が3勝1敗で並び、近畿大立命館大が2勝2敗で続き、1勝3敗で京産大、大体大、摂南大が下位争いを演じるといった、例年にはない混戦状態にある。後半戦の結果次第では順位が大きく入れ替わる可能性を残す、まさに群雄割拠の様相を呈している。

 その中で注目すべきは、開幕戦で昨季優勝校の同志社大を破った関学大の躍進であろう。初戦の勢いそのままに京産大、大体大をたて続けに撃破したことからも開幕戦の勝利は決してフロックではなく、着実に地力をつけてきていることの表れだろう。

 関学に肩入れするのには理由がある。大学時代の友人であるFWコーチからの誘いで4年ほど前から関学のグラウンドに足を運び、数えるほどの機会ではあるがBK指導を行っていた。顔と名前の一致する選手がたくさんいることもあって、どうしても親近感が湧くのである。

 今シーズンが始まる直前の練習試合を見に行き、そこではどうにも驚きを隠せなかった。明らかにチームが変わっていたからである。見るからに線が細かった選手たちの身体は逞しくなっていた。おそらくはそれに伴ってコンタクトプレーへの自信を持ち始めたこともあるのだろう、各選手の顔つきは勇ましくなっていた。特にFWの変貌ぶりはめざましく、ラグビーに求められる本能的な荒々しさがプレーの随所に見られたのである。

 もしかしてこのまま突っ走るかもしれないという私の密かな期待は、立命館大に1点差で敗れたことでひとまず打ち砕かれた。ますます混沌としてきた優勝争いに母校である同志社の巻き返しを期待しつつも、今年に至っては関学の快挙を願ってやまない。

<08/11/04毎日新聞掲載分>