平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「とにかくウマい」に勝るものなどないのだ。

12月に入ってからというものあまり体調が芳しくなくて、風邪気味になっては治り、治ってはまた症状が出てくる、の繰り返しである。それでもなんとかひどくならずに持ちこたえてきていたのだけれど、ここんところの忘年会ラッシュでまた体調が下降線を辿っているようである。

気疲れとか飲み過ぎ食べすぎとか、そんなダイレクトな疲れではなくて、むしろ楽しくてはしゃぎ過ぎたがゆえに疲れているという感じである。だって、ここ数日に催された宴はおいしい食事とうまいお酒と楽しいおしゃべりで彩られていたからである。年内の講義も先週の水曜日に終わり、気持ち的にホッとしてしまって気が緩んだというのも体調を崩した一つの要因だと思う。土日に遊び過ぎて月曜日の朝に熱が出る小学生のようなものなのだろう、きっと。

日曜日のラグビー観戦後は大学の先生方と【肝胆亭】に。大学院生の時からいろいろとお世話になっている先生方なので、特に緊張するわけでもなくワイングラスを傾けながらペチャクチャと話をする。後半30分過ぎの勝敗を決するポイントになったPKの判断について、致命的な判断ミスもなく力が拮抗していたことで穏やかに流れていたゲームに大きな判断ミスという裂け目が生じて一気に流れが三洋に傾いたのである、という話をする。ホントに、あの場面でなぜに狙ったのであろうか。魔が差したのだとすれば「PGを狙う」という判断すらもゲームの流れに取り込まれていたことだから、それまでの試合展開の中で神戸側が何かの判断ミスを起こしていたことになる。うーん、スポーツを語るのは本当に難しい。

スポーツの話ばかりではもちろんなく、自らの研究についての話を聴いてもらって、いくつかのアドバイスを頂いた。そうしてアドバイスをくれるというのはとても有難いことである。お店を出て階段をのぼりながら「もっと精進しよう」と決意を新たにするのであった。そして、僕が大学院生の時の指導教員からさりげない優しさを受け取って、じーんとするのであった。

その翌日は【神戸元町別館牡丹園】でのいつもの宴。いつもの場所でいつものメンバーといつものようにふくよかな時間を過ごす(宴の模様はマダム松澤さんアオヤマさん
のブログにて臨場感たっぷりに描かれてあるので、是非そちらを読んでみてほしい)。世間的な意味での「忘年会」ということばで括りたくないほどに、ここ別館牡丹園での宴は格別である。料理がおいしいのは今さら言うほどのことでもなく、当たり前なこと。なんていうか、お皿が出てくるたびに「これさえあったら他は何にもいらんやろ」という気持ちに否応なくさせられてしまう。唸ってしまう。そして気遣いということばがいらないほどに卓を囲む皆がお互いに気遣い合っているという場が、すべての料理を際立てる。いや、際立てるのではなくて、当たり前のウマさに仕立て上げるというかなんというか。

なんかようわからんくなってきたけど、とにかくウマいのだ。そう、「とにかくウマい!」という表現以外はどれも陳腐に聞こえてしまうほどにウマいのである。

そして当たり前のようにお酒もウマく、おしゃべりもウマい。吸い込む空気までもがウマく感じるのだから、その場に身を浸しているだけでなぜか元気になるのは当たり前の話なのだ。そうした場になるのはまさしく料理に注ぎ込む王さんの心が為せる業であり、また奥さんがふりまく底抜けに明るい笑顔を支える心と相まって、僕の心はフワフワと軽くなって気持ちよくなるのである。たぶん卓を囲むみんなもそんな感じになっていると思われ、そうしてフワフワと軽くなった心同士が共鳴し合って生まれるのが、ふくよかさ、なんだろう。

これでまた今年も無事に終えることができそうだ。
と、思えるだけで幸せだと感じられるのは、とても幸せだ。