平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「懐かしのコウベ」身体観測第102回目。

 三洋電機ワイルドナイツvs東芝ブレイブルーパスの試合を皮切りにラグビートップリーグが開幕した。3年連続準優勝で今年こそ優勝をと切に願う三洋電機が安定した戦いぶりで勝利を手にしたが、破れた東芝も終了間際にトライを奪うなど底力を見せつけた。その戦いぶりからは両チームともに順調な滑り出しを決めたと思われ、今年もこの2チームを軸にリーグが展開していくことはおそらく間違いないだろう。

 その翌日に長居スタジアムで行われた神戸製鋼コベルコスティーラーズvsクボタスピアーズの試合を見た。古巣の開幕試合に足を運んだのは2年ぶり。スタジアムの入り口付近ではかつての友人たちと言葉を交わし、観客席へと向かう途中でスタジアムの熱気に包まれるといやが上にも気分は盛り上がる。「やっぱりラグビーはいいもんだ」と甘酸っぱい懐かしさが口の中に広がった。

 今年の神戸製鋼には特別な想いを抱いている。ステップの軽やかさやパスのしなやかさなどの身のこなしに以前から着目している正面選手が今年度より試合に出場可能となったこともそうだが、それ以上に、同級生の大介(大畑)が引退を決意して臨むラストシーズンだということ、それから現役時代にはグラウンドの内外で的確なアドバイスをくれた苑田さんがヘッドコーチとして臨む初めてのシーズンだということが大きな理由だ。

 刻一刻と選手生活の終わりが近づく中では1試合1試合がとても大切に感じられるに違いない。試合ごとに込められたその心を感じるべく視線を注ぎたい。また、過去の栄光と決別した上で低迷するチームを立て直すのは容易ではない。チームが変貌していくそのプロセスに注目しよう。

 かつてのチームメイトがどのような想いを抱きながら走り、また采配を振るうのか。目一杯に想像力を働かせて見届けようと思う。

<10/09/07毎日新聞掲載分>