平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

いつもと同じ、ってこと。

また1週間が始まった。いつものように迎える月曜日を、いつものように過ごすことで心と身体にスイッチが入るような気がする。朝から今週分の講義内容の見通しを立てて、ひとつひとつを準備していき、昼過ぎにはラグビーサークルの学生たちとともに1時間ほど練習。それが終わるとまた研究室に戻ってきて講義の準備の続き。そして帰る前にはグラウンドに出てラグビーボールを蹴って、インターバル走をする。昨夜は遅くまでラグビーワールドカップの準決勝ニュージーランドvsオーストラリア戦を見ていたこともあり、研究室に着いたのがいつもより1時間だけ遅かった以外は、まるでいつもと同じように過ごしたのだった。

そういえば高校生までの生活を振り返ってみると、ほぼ同じような1週間を過ごしていたことが思い出される。ボクが通っていた学校は朝練がなかったので1時間目に間に合うように通学すればよく、授業が終わってからはラグビーの練習で汗を流し、自転車にまたがってチリンチリンと帰路につく。当時まだ絶対軒数が少なかったコンビニエンスストアで買い食いするときもあった(コンビニと言えばローソンだった時代だ)。それからもちろん学校の勉強の復習などするはずもなく、テレビをだらだらと見て眠たくなったら眠るという生活をしていたように思う。

社会人になってしばらくのあいだもそのような生活だった。当時はまだプロ契約がなかったので全員が仕事をしながらラグビーに取り組んでいた。練習は18時半から。神戸製鋼ラグビー部は伝統的に練習時間が短かったので、20時過ぎには終了。個人練習をしたり身体のケアをする選手はいたけれど全体での練習は2時間もしない。そこから寮に帰ってご飯を食べて暫しの時間を部屋でくつろぐ。映画を見たり好きな本を読んだり、チームメイト同士で集まってしゃべったり。全体練習が週に3日だったし、試合の無い週末は基本的に休みだったので、それ以外は比較的ゆったり過ごすことができた。とはいえ週末の午前中はチームメイト数人で集まって個人練習をしたり、一人でウエイトトレーニングやキックの練習をしたりと、なにもせずに週末を過ごしたりすることはほとんどなかったけれど、精神的な余裕があってラグビーに対してとても素直に取り組むことができていた。ラグビーをずっと好きでいられるような、そんなふくよかな時間だったと記憶している(試合にも勝ってたしね)。

それがいつの間にか練習時間も増え、一回の練習時間のみならず週の練習日も増えていって、精神的にだんだん窮屈になっていった。試合で結果が出なくなるとどうしても練習時間が増える。これはどのスポーツにもありがちな現象だろうが、練習時間を増やせば増やすほどチームとしてもまとまり選手個々の競技能力も向上するというのは、あまりに安直な考え方ではないだろうかとボクは思う。練習量が増えれば確かに少しは強化されるかもしれないが、目まぐるしく情況が移り変わるラグビーでは常に臨機応変な対応が求められるわけであり、だからこそ個々がその情況に応じて判断する能力を身につけなければならない。やらされる、のではなく、自らで考えて最適なプレーを選択し、それを共有する、ということが必要だ。それにはすべてを指導者側が与えて、それをただ遂行させるという練習のやり方ではどうしても不十分だろう。

というのは、こうした経験を経た上でまだまだ駆け出しの指導者が考えている自論である。あくまでも駆け出しの指導者なので、それを裏付ける経験に事欠くのは百も承知しているが、まあちょっと言ってみたかったのである。とは言ってもボクの中ではかなりの確信を持ってはいるのだが。

では最後にラクロス部の報告を。

昨日、わがラクロス部の今シーズン最終戦京都大学農学部のグラウンドで行われ、京都女子大に6‐9で敗れた。1部リーグ昇格を目標に掲げたものの、終わってみれば3勝3敗1分けの4位。目標に照らし合わせれば不本意な成績だったことは確かである。ただどうにも落ち込んでしまうのは、試合の流れとか勝負どころとか、ボク自身がラグビーで身につけたことを学生たちにどこまで伝えればよいのか、そしてそれが果たして伝わっているのか、そして伝えることはそもそも必要なのかがよくわからくなってしまったからである。これがラクロスではなくラグビーだと学生たちにもっと具体的なアドバイスができたはずで、学生たち自身もボクの言葉を受け入れやすかったのではないだろうか。ラクロスの競技経験がないことをこれまでは前向きに捉えてきたが、ここにきてその限界が見えてきたような気がしている。ここらあたりをもう少し踏み込んで考えて、来シーズンに備えたいと思う。いっちょラクロスを始めてみるかなどと無謀な試みも視野に入れつつ、思考に耽ってみようと思う。駆け出しの指導者にとってはまだまだ学ぶべきことがたくさんあるな、うん。