平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

2020年4月9日。

今日も大学に来る。

 

新型コロナウイルス終息の見通しが暗いなか、うちの大学もネットを通した遠隔授業を行うことになった。とはいえ、僕を含めたほとんどの教員はそのやり方に習熟していない。Skypeとかzoomとか、一度は耳にしたことがあっても使ったことはないし、それを授業で使えといわれてもなかなか難しい。なので、学内のこういう分野に詳しい教員がワーキンググループを作り、大学の教職員に向けて研修会を実施してくれたのだった。

 

少人数で行う演習はzoomによる双方向的なかたちで行い、大人数の講義はMicrosoft Teamsというソフトを使ってほぼ通信教育のような授業を行う予定だ。研修会自体がzoomで行なわれたので、演習がどのような雰囲気になるのかのイメージはひとまずつかめたように思う。ただTeamsについては細かい作業を覚えなければならず、一度研修を受けただけですべてを理解するには至らずで、学期開始までに習得すべく勉強しなければならない。

 

緊急事態宣言が5月の連休まで続くので、そこまでのひとまず2週間は自宅および研究室のパソコンからの授業となる。脱線も含めて対面での講義の臨場感を大切に、今までPower Pointをなるべく使わずにやってきた僕だから、なんとも慣れないのだけれど、こんな事態だから致し方ない。ないものねだりをしたところでなにも変わらないのだから、これを機に遠隔授業の利点を見つけるべく積極的に授業づくりをしていこうと思う。教育効果を損なわないよう細心の注意を払いながら、遠隔授業だからできることとその効果について、身体性の観点から観察してみよう。

 

おそらくウイルス感染拡大は2週間では収まらないだろう。ということは遠隔授業を行う期間はもっと延びる。春学期の講義や演習はすべて遠隔授業になると思っておいた方がいいだろう。予期せぬ事態の到来は不安を増大させ、モチベーションを高めるのに一苦労するからだ。一度切れてしまった気持ちを立て直すのは容易ではない。予測不能な未来とうまくつき合うためには、どう転んだって対応できるという心構えが必要だ。その心構えを作る意味でも、実際に対応できるだけの準備が求められる。今のうちに課題の設定や参考資料の整理を、コツコツとやっておきたい。

 

そういえば通勤途中に『世界哲学史2ー古代Ⅱ世界哲学の成立と展開』(ちくま新書)を読み終えた。全8巻のこのシリーズは、2020年1月から毎月1冊発刊されている。昨年の終わりごろに読んだ、出口治明『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)ですっかり哲学史に興味を抱き、もともと哲学好きだったこともあって、すぐにこのシリーズを手に取ったのだった。洋の東西を問わずいつの時代も人々はよりよく生きるために思考を働かせてきた。それがリアルに伝わってきて、とても熱い。哲学史が醸し出す壮大な物語に触れることで、この今の、二進も三進もいかない現状で知らず識らずのうちに溜め込んでいるストレスが発散できる。そんな気がしている。

明日の楽しみは買い置きしてある『世界哲学3』だな。

ではそろそろ帰路につくことにする。早く娘の顔が見たい。