平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

2020年4月20日

この土日は家族で過ごす時間を堪能した。散歩ついでに生活必需品の買い物をしたあと、家の中では娘の言いなりになって部屋の中を歩き周り、娘が昼寝をしているあいだに妻と無料配信されているドラマを観た。今年に入ってすぐに放送されていたサスペンス系の「10の秘密」だ。まだ4話目だが、登場人物それぞれの胸にある秘密が連鎖していく様がオモシロい。今夜も娘を寝かしつけたあとに続きを観る気、満々である。

つい先日、観終わったのは「空飛ぶ広報室」。航空自衛隊の広報室を舞台にした有川浩の小説が元になっているこのドラマは、登場人物が時間を経て成長していく様子がオモシロかった。やたらに泣いてしまったのは自粛ムード漂う昨今に心が疲弊していることが大きいのだろう。ドラマの中で可視化される優しさに触れるたびに、いちいち心が反応してしまう。僕はもともと涙もろく、よく感動するたちなのだが、さすがにここまで涙が流れたのは初めてだ。年齢を重ねたこともあるのかもしれないが、やはり心が疲弊しているのだろうと思う。不思議なことに泣けば幾許か気持ちがスッキリする。

「外出自粛」がなければこの2つのドラマを観ることはなかったはずだ。家にいなければならないという情況だからこそ観てみる気になったのであって、そうでなければわざわざ時間を作って観ることはなかっただろう。どこか鬱々とする日常をなんとか乗り切るために観始めたドラマに、想像以上に心が揺さぶられたのは予想外だった。そういえばテレビドラマは10代のころによく観たけれど、20代も半ばを過ぎたころからはまったくといっていいほどチャンネルを合わせなくなった。でも、いいね、やっぱり。映画とは違った趣があって、1話1話を楽しみに、次が待ち遠しくてドキドキする感じがとても懐かしい。

新型コロナウイルスの感染拡大が広がりつつあり、そのことに少なくない不安が広がっている。さらに経済的な落ち込みもまた心配で、行きつけの店を営むあの人やあの人の顔が浮かんで気分は沈む。「二重の不安」が負の螺旋を描いて下降してゆく昨今だから、意図的にそれに抗うための心がけは欠かせない。Twitterに呟いたように「口角を上げる」「好きなものを数える」を実践しているのもその一つで、八方塞がりのこの日常を半ば強引にご機嫌に過ごさないと、正直なところやってられない。

ウイルスの蔓延への不安はどうしようもない。マスクを着用し、手洗いを励行し、「3密」をできる限り回避しながらひたすら天に祈るくらいしかできない。でも経済的な落ち込みへの憂いが引き起こす不安は政治次第でなんとかなる。むしろ今の我が国の政治は、この不安を増大させている。ここには憤りしかない。口角をあげて笑顔を作りながら好きなものを数え、ドラマを楽しみながらも、心の奥底ではこの憤りをずっと抱え続けておかねばと思う。