平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

『合気道とラグビーを貫くもの』近日発売。

昨夜は寝る前に「シリアナ」を見たせいで思考の導火線に火が点いてしまってどうにも寝付きが悪く、朝目覚めたときに頭がボーッとする感じが強くてすかさず二度寝を敢行。その二度寝をするときも、「あっ、そう言えばワールドカップ初戦のフランスとアルゼンチンはどうやったんやろか…」と、日本時間で朝方4時キックオフの試合の行方が気になって眠りが浅くなったのか、時間的には充分すぎるほど眠っているにもかかわらず、昼になった今でも何とも言えない眠気に包まれている。眼の奥がギュッとしてなんだかフワフワした感じである。

そんなフワフワ感を吹き飛ばすべく、心を引き締めて報告することにしよう。

合気道ラグビーを貫くもの』(朝日新書)が手元に届いた。

合気道とラグビーを貫くもの 次世代の身体論 [朝日新書064]

合気道とラグビーを貫くもの 次世代の身体論 [朝日新書064]


表紙を見ると、内田先生の名前の下には確かに“平尾剛”と書かれてある。
「本になる」ということを頭では理解してはいても、内心ではどこか実感に欠ける出来事として捉えていたのだろう、実際に出来上がった本を手にしてみて急激にうれしさがこみ上げてきた。と同時に、照れ臭い気持ちも湧き起こったのだが、いろいろな想いを足して引いて混ぜてみれば、やはりうれしいことこの上ない。
師匠である内田先生との共著が僕の初の著書になったことには、まさに感慨無量である。

昨年末、朝日カルチャーセンター大阪にて行った『武術的立場』というテーマでの対談に加えて、その後に先生宅で行った2回の対談を合わせたものが本書となる。朝カルで話す前にも、麻雀卓を囲みながらや、麻雀終了後にお酒を飲みながらみんなでワイワイ話すことはあったけれど、先生とふたりでじっくり話す機会はなかった。だから、朝カルでの対談が決まったときには、先生とふたりでお話しできることが率直にとても嬉しかったのである。

その後、いざ対談する日が近づくにつれて、何を話そうか、何を話せばいいのだろうかとあれこれ考えもしたが、結局のところそうして考えてはじき出した内容の話はほとんどできなかった。“徹子”に徹した内田先生の話に乗せられて、流れのままに話させていただいたに過ぎないのだが、それがまたオモシロかったのである。

その後2回の対談は、数々の甲南麻雀例会に参加することですっかり落ち着く場所となった内田先生宅で行われたので、初回の対談よりもリラックスして話すことができて、さらに楽しくおしゃべりできた。そうした和やかなムードの中であっても次第にヒートアップしてくる話の中では、自分が投げかけたことばを自分で聴いて「オレってそんなことを考えていたんだ」という発見もあったし、それはそれで不思議な体験としてオモシロかったのだけれど、何よりも内田先生の発想と思考の軌跡に感嘆させられっぱなしであったことが今でもはっきり映像として残っていて、それはそれはオモシロかった。

ってなんだかオモシロ自慢な文章になってきたな。

肝心の内容はというと、まあ読んでみていただければ分かるのだが(笑)、ほとんどはスポーツ界の一般常識とはかけ離れた内容のことを話している(と思う)。
だけれど、一般的常識とかけ離れていようがいまいが、僕自身が本当にそう感じ、思い、考えていることなのだから仕方がないであろう。何と言っても、現在の一般常識が絶対的に正しいというわけではないし、「常識」という枠組みがその都度見直さざるを得ないという必要性から逃れられないことからも、わけのわからないことをぶつぶつ言う人間がいたっていいだろう。

一人でぶつぶつ言ってるあいだは変人だけれど、その内容を真摯に受け止めてくれてしっかり投げ返してくれる人が現れると、たとえわけのわからない話であったとしても、そのわけのわからなさを理解しようと努める人が、ひとり、またひとりと増えてくるような気がする。ただし、そうなるためには、人類学的な視点とも言える、人間という存在に対する根源的な問いかけを必要とする。

そもそも私たちにとってのスポーツって何なの?
金儲けの手段?
趣味?
社会に非暴力化をもたらした営み?

いずれも正解だとは思うが、人間的な営みであるからには人間的な成長を伴うのが当然であって、そこを蔑ろにしてスポーツを語ることはできない。
それは何もスポーツに限ることではないのだろうけれど。

本書では、僕のぶつぶつを内田先生が目一杯に受け止めてくれている。
そして、先生から投げ返されてくることばに僕は全身を痺れさせて悶えている。
そんな変なヤツに「何を言うとるんだ、コイツは」という突っ込みを入れながら読んでみて欲しい。

合気道ラグビーを貫くもの』(朝日新書)は9月13日に店頭に並ぶようです。
みなさん、どうぞよろしく。