平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

ラグビーW杯、vsカナダ戦に熱狂す。

昨日の痛みが嘘のように引いたことに気をよくしている。
一日のほとんどを横たわり、風呂に入ってストレッチしていたのが奏功したのか、
僕の体幹は昨日とは比べ物にならないくらいにシャキっとしているのである。
だがこの前のことがある。まだまだ油断は禁物だ。

ラグビーワールドカップにおける日本代表にとっての最終戦となるカナダ戦は、
終了間際のトライ&ゴールで同点に追いつき、ノーサイドを迎えた。
思わず声が出るほどに夢中になって試合を見たことも、
腰の回復につながったのかどうかは定かではないが、とにもかくにも燃えた。
今朝、出社途中の道すがらに偶然すれ違った、かつてのチームメイトで今は神戸製鋼ラグビー部ホームページの更新を手がけるサイト上の名前が「レッド」君こと今村順一に、挨拶を交わすなりすぐさま昨夜の興奮を伝えてしまうほど、試合を見て得た感動の火種は一日経っても長らく燃え続けていた。
ほんとにどれだけタックルにいけば気が済むのだろうというくらいにジャパンはタックルを繰り返していた。その姿に感動せずにはいられなかった。

ただひとつだけ腑に落ちないというか、
僕の独断的な希望を言わせてもらえるとすれば、
それは7点差のビハインドを背負って残り10分を切ったあたり。
相手ゴール前の絶好の位置でペナルティを得た日本代表が、
果敢にもスクラムを選択して一気にトライを狙いにいった場面である。
いつのときも積極的にトライを奪おうとする姿勢は確かに必要である。
だけど、あくまでも勝ちにいくのであればあそこはペナルティゴールを狙って欲しかった。

ペナルティゴールが決まれば4点差になる。
トライが5点なので、ワントライで試合をひっくり返すことのできる点差である。
ひとつのトライでひっくり返る状況というのは、
試合をリードしているカナダにとってはとてもとてもイヤなものであり、
えもいわれぬプレッシャーを背負いながらの戦いを強いられる。
反面、これまでに全敗しており、且つカナダよりも世界ランキングが下位にあたる日本代表にとっては失うものなど何もなく、とにかくひとつのトライをとるためにありったけの力を振り絞るだけでよく、むしろ「トライをとる!」と目的が明確になる分だけ思い切ってプレーすることができる。

もちろん日本代表の方にも、
「トライを取れなければ負ける」という種のプレッシャーはある。
だが、贔屓チームを越えて劇的な試合展開を望む観客の欲望にベクトルが合うという点から考えれば、明らかにカナダが背負うプレッシャーとは根本的に質が違う。

先のフィジー戦を始めとする日本代表の戦い振りに、
ラグビー日本代表は地元での人気が高い。そう、観客はほとんど味方である。
「(数字的に)勝たなければならない」カナダと、
「勝ったらもうけもの」の日本代表では腹の括りやすさが違うし、
なによりも「できることなら勝って欲しい」と願う観客を味方に付けているのだから、まさに「奇跡」が起こる条件は整っている。

そんな状況の中で「もしかして勝つかも?!」という淡い期待に身を委ねながらの観戦がしたかったというわけである。

しかしながら、スクラムを選択した時点での僕が想像しうる最高のシナリオは無事に達成されたので、とてもとても楽しめたのではあるが。
難しい角度からの最後のゴールキック大西将太郎は本当によく決めたと思う。

ラグビー日本代表の皆様、本当に感動をありがとう。

ちなみに、僕はJ-SPORTSでの観戦だったので被害を受けなかったのだけれど、
なんでも、日テレの中継では最後のトライシーンが「割愛」されたらしい。
今日になって約1000件も抗議の電話があったのだという。
スポーツの試合で一番盛り上がるシーンが切れるなんてことが許されていいわけがなく、しかも点差と残り時間を考えればノーサイド直前に緊迫した展開になることは予想できたはずで、あまりの体たらくになんだかため息しか出てこない。ふうー。
日テレといえばふと「NEWS ZERO」が頭に浮かび、村尾キャスターの顔もまた浮かんできて、これもまた深いため息に包まれる他ないのであった(その理由についてはまたいつか機会があれば書いてみるつもりである)。