平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

ラグビー三昧の三が日。帝京FWって強いよなあ。

皆様、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。


気がつけばもう4日も経ったのかと、正月はあまりにのんびり過ごしていたものだからどうやら時間の感覚が狂っているみたいである。氏神さんへの初詣を済ましてからは、年賀状の返事を書いたりラグビーを見たりラグビーを見たりラグビーを見たり、の三が日であった。

大学選手権準決勝は、両方試合ともに思いのほか点差が広がる試合になった。
早稲田に対して東海大はもうちょっとやれると期待していたものだから意外な完敗にびっくり。確かに早稲田の出来はよかったけれど、あそこまでの差が開くとは到底予想していなかった。続く帝京vs法政は、帝京の大人びた強さだけが際立つような試合展開となり、後半の途中くらいから興味が半減する。実力が拮抗したチーム同志の試合でよく見られる、気合いと気合いがぶつかり合うような緊迫した場面がほとんどなかったからである。この先もおそらくそんなシーンは期待できないだろうと高を括り、テレビの電源まではさすがに切らずにつけっぱなしにしておいて限りなく微弱な意識を向けたままにネットに興じたのであった。

帝京のFWは恐ろしく強い印象を受ける。外国人選手2名を擁しているのだから当然と言えば当然かもしれないが、その外国人選手のツイとボンドがどちらかと言えばペネトレイター役というよりも、サポート的な役割を担っていることがいかにも心憎い。だからこそNO.8野口選手は相手に向かって自由に勝負を挑むことができている。この野口選手の突進がなかなか強いし、効果的にゲインを切っているのである。もちろんツイ選手もボンド選手も突破役も担っているのは間違いない。けれども、その限りではないことが帝京FWの強さであり、摂南大や東海大とは異なるところだろう。

個々に備わった身体能力の高さにものを言わせるのではなく、個々人の能力を突出させないように一つの塊としてのFWが機能しているのが帝京のFWである。
ボールキャリアをサポートしなくてはならない状況ではサポートし、自らが突破するためにボールをもらう方がいい状況では突破を図る。こうした動きは相手ディフェンスからすれば的を絞りづらい。たとえカラダの大きな外国人選手であったとしても、いつもいつも突破してくるのが見え見えであれば、ディフェンス側は突進に備えることができるので、時にダブルタックル(2人でタックルをすること)などで仕留めることも可能となる。次に相手が仕掛けてくるプレーが読めるからである。でも、状況に応じてサポートプレーもするし突進もする、ということになれば、相手の動きを読むことが難しくなり、どうしても後手を踏む。

そうしてアタックをし続けることによってジワジワと先手を奪える立ち位置へとポジションを移していき、やがてFW戦において主導権を握る。ラグビーではFWの戦いが勝負そのものを決する場合がほとんどである。FW戦の不利はチームの士気にも影響する。たぶん帝京はそうして勝ってきたし、それこそが帝京の強さだろうと僕は思う。もちろんBKにも優秀な選手が揃っている。両CTBの動きは特筆に値する。というか僕好みのプレーをするという方が適当かもしれない。けれども、FWが四分六で負けている状態でBKが盛り返すのは至難の業であり、特にキック主体のラグビーが主流になりつつある現状でそうした状況を打破できるほどの展開力のあるBKは、他チームを見渡してもほとんど見あたらない。BKの走力が生きる場面を作り出すのはFWの役目であり、やはりラグビーはFWで決まるのである。

なんだか帝京を礼賛してばかりいるが決して特別な思い入れがあるわけではない。ただ、試合を見ていて、なんだか大人びたチームだなと感じ、この差はなんなんやろかと考えてみて行き着いたのが今日の内容である。欲を言えばもう少しキックを減らしてBKの展開力を重視して欲しいとは感じる。というのは、かつてBKだった一ラグビーファンとしてのささやかな願いである。

結果的には大学対抗戦で戦った両校の決勝となったわけだけれども、そのときは帝京が早稲田を下している。この「かつては勝利した」という事実が帝京にとってのプレッシャーになるのはおそらく間違いない。そんなことは帝京サイドもわかっているから、何とかして気にならないようにと監督からは何らかの言葉がけが為されるとは思うけれども、こうしたプレッシャーは「無意識」にじわじわ影響を及ぼす。早稲田からすれば「一度負けてるんやからダメでもともとやん」となるが、帝京にすれば「一度勝ってるのにここで負けたら格好悪いよな」となる。

こうした心理作用がどこまで選手たちの手元を狂わせるのか。とても興味深い。

さらに帝京に追い打ちをかけるようだが、相手はここ数年決勝に顔を出し続けている早稲田であり“超”伝統校である。そのあたりを鑑みるところ、いくら帝京強しと言えども10日の決勝戦は早稲田に分があるのではないかとみるが、どうだろう。
伝統校による目に見えないプレッシャーは相当に厳しいものがあるのだ。

もしも帝京が勝てば創部以来初の全国制覇となる。早稲田に分があると予測しながらも、僕の本音はというと帝京の優勝を願っていたりする。圧倒的なブランド力を駆使する昨今の早稲田を、新興校である帝京が乗り越える瞬間を見てみたいと思うからである。いやはやどうなることやら。

さて、高校ラグビーの方もいよいよ明日はベスト4が激突。ノーシードながらここまで勝ち上がってきている京都成章東福岡高校SO布巻選手のしなやかな走り、身体のサイズが小さいながらあれだけの強さを誇る御所工・実に注目して見ようと思う。

最後に、昨日信じられないくらいの惨敗を喫した神戸製鋼コベルコスティーラーズについては、まだ試合を見ていないので書かないでおくことにする。結果を知った今となっては、試合内容について事細かに書く意欲がまったく湧いてこないのだけれども、でもまあそういうわけにもいかんよなあと思ってたりもしているわけで、心がざわついているのである。

というわけで、また後日に(たぶん書く、と思う)。