平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「マイクロソフト杯の展望」身体観測第65回目。

 ラグビートップリーグ2008-2009はレギュラーシーズンの全日程を終えた。残すところはベスト4が優勝をかけて争うプレーオフトーナメントのみで、東芝三洋電機サントリー神戸製鋼が激突する。

 開幕当初から快調に白星を重ねてきた三洋電機はリーグ終盤でけが人が続出。トニー・ブラウンらの戦線離脱により、昨年から続いていた勢いはここにきて沈静化しつつある。ラインブレイクに優れたフォワードと決定力のあるバックスが織りなす連続攻撃はいささかその破壊力を弱めており、このあたりをどこまで立て直せるかがポイントになるだろう。

 対照的に、尻上がりに調子を上げてきたのが東芝である。三洋電機との最終戦では、従来のスタイルであったスタンディングラグビーを彷彿させるような戦い振りで圧勝劇を演じた。点差を知って驚き、また試合内容からも驚かされた。優勝候補に挙げられていたもののその実力が十分に発揮されずにこれまでもたついていた感があるので、ここにきてようやく本来の力が出たという印象が強いのも確かである。しかし、これほど劇的にチームが変貌すれば驚かざるを得ない。強い、の一言である。

 この2チームをサントリー神戸製鋼が追う。勝ち点の差からみてもおそらくこの2強を崩すのは容易ではないが、つけいる隙がないわけでもない。東芝に大敗したサントリーはおそらく目の色を変えてリベンジに燃えているはず。強力なスクラムを武器にプレッシャーをかけられれば面白くなる。神戸製鋼は、調子を上げる以前とは言え東芝に大勝しており、徐々に整備されつつあるディフェンス力を基にロースコアに持ち込む展開になれば勝機は訪れる。

 負ければ終わり、一発勝負のトーナメント戦は、リーグ戦とは違った緊張感を作り出す。意地と意地とがぶつかり合う白熱した試合を、心より楽しみにしている。

<09/01/27毎日新聞掲載分>