平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

朝カル内田×平川対談、対クレスコ戦回顧。

日曜日の早朝にイソイソと出かけたのは髪を切るためである。昨秋ごろから伸ばしていて、この勢いのままに大学時代を彷彿とさせるくらいまで伸ばそうかなと思っていたのだが、あえなく断念。「彼女と別れたから」なんてナイーブな理由などもちろんあるはずもなく、ただの気まぐれである。耳の辺りがスースーとするし、鏡の中には見慣れないツラがどかんと居座っているが、これも切った直後だからそう感じるに過ぎないだけだろう。これから迎える夏に向けて準備が整った、ということにでもしておこう。

さてさて、先週末のことを少し書いておくことにしよう。

会議が終わってすぐに駆けつけた朝カルでの対談、内田樹×平川克美「内向きで何か問題でも?〜足元を見よ」が抜群に刺激的であった。平川克美さんは内田先生の小学生の頃からの同級生で、東京下町な感じの話しぶりが実に愉快で(なんて言うのはとてもおこがましいのだけれど)度々会場を爆笑の渦に巻き込んでいた。お二人が着席されてすぐ、ピンマイクの取り付けに戸惑う平川さんの素振りが僕の知っている平川さんらしくて、とても久しぶりにお会いしたにもかかわらず余所余所しい気持ちを抱かせないところがホントに平川さんだなあとニンマリする。

「攘夷で鎖国、それでいいじゃない」という内田先生の希望的未来予測な発言は、冗談っぽく聞こえるような語り口で話されていただけに「あっ、これは本気だな」と直感するに十分だった。本当の意味での国際性についての話がとても印象的で、世界基準に合わせるようにして自己を決定付けるのは国際性でもなんでもなく、自らの立ち位置をじっくり吟味し確認することなしには国際的などあり得ない。グローバリゼーションと国際性がセットで語られる今の状況はどう考えてもおかしい。みんな内向きになろうぜ。内向きになって自らの語る言葉を点検し、できあいのストーリーに乗っかってばかりいるのはやめようよ。自己の対象化に精を出すべきだよ。

お二人はおそらくこんなことをあれだけ楽しそうに話されていたのだろうと解釈している。もう少し砕けた言い方をするならば、「井の中の蛙」が井戸の大きさを知ろうと努力し、そこでどう足掻くのかを考えようよ、ということだろう。

いつもながら胸の空くような話ばかりの90分に、ここんところフワフワとしていた僕の心が、落ち着くべきところに落ち着いた気分になった。【黒門さかえ】で行われた、江さん青山さんに中島さん夫妻と内田先生平川さんによる打ち上げにまで寄せてもらって、この日はとても贅沢で爽快極まりない一日を過ごさせてもらった。

内田先生、平川さんをはじめ、皆様、楽しい時間をありがとうございました。おかげで得体の知れないわだかまりの一部がごっそり削げ落ちたような感じになりました。


翌日はラクロスの試合。舞洲まで車を飛ばす。
対戦相手だった福岡大学がインフルエンザの影響を受けて関西に来れなくなったことで、急遽試合相手が変更になる。クレイージースコーピオンというクラブチームと戦うことになった。このクレスコとは、今春の練習試合で2度対戦していて、0−9、3−7でいずれも敗戦している。代表選手も所属するクラブチームだけに実力差はあるから結果はそれほど問題ではない。しかし、だからといって始めから負けるつもりで試合をするなどオモシロくもなんともない。本気で勝ちにいく。そこに真剣みが生まれる。相手のペースで戦うのではなく、自分たちのペースで戦うこと。そして、イメージの中で相手を大きくしないことが大切。相手も同じ人間なのだからミスもするし、焦りもする。というような声掛けをしてみんなをグラウンドに送り出した。

最初5分まではよかった。けれどもそこから崩れ出す。

相手のキーマンに個人技を見せつけられて立て続けに点数を決められると、明らかに動揺する選手が増えていき、浮き足立ってしまった。前半だけで0−7。沈み込む気持ちを切り替えるべく「後半のスコアだけでも勝ちにいこう」と声を掛け、それが功を奏したのか後半の最初10分はいつものような思い切りのよいプレーが顔を覗かせた。大量リードで気持ちの緩んだクレスコに助けられた部分があるにしても、アタックする時間帯が長く、いつもの親和らしいプレーがところどころ見られたのである。

何とか2点をもぎ取り、ゴール前での決定的な得点シーンを幾度もつくったが、残り10分を切ったあたりから徐々に流れが相手に傾き、ついには3点を取られて、後半のスコアさえも負けたのである。

案の定、試合後の雰囲気は暗かった。前回の立命館大学との試合内容が良すぎただけに、この試合の不甲斐なさが際立ったというのもあるだろうが、それにしても暗かった。でも、僕は落ち込む必要などないと考えている。代表選手もいるクラブチーム相手によく戦ったとさえ思っている。試合は勝つときもあれば負けるときもある。しかも格上相手の試合に負けたからと言って落ち込むのは対戦相手にも失礼だし、それはまだまだ自分たちのチームを対象化できていない証拠でもある。目標は先にある。それに向けてまた努力すればいい。

ただ一つだけ、言っておきたいことは、試合中、点数を決められて劣勢になった時にその原因を探るのはやめるべきである。ミスを「指摘し合う」ことは絶対に試合中にしてはいけない。ミスを「確認」するのならまだしも、自らの焦りを誤魔化すようにチームメイトのプレーを批評するのは百害あって一利無しである。特に格上相手に勝利するには一致団結が必要で、チームが一丸とならなければ勝つことはできない。一つのミスを全員でカバーする気持ちがなければ一体感など生まれやしない。それだけは肝に銘じていて欲しいと思う。

技術的に細かな点はまた練習すればいいことである。何より相手は技術的にも優れているクラブチームである。技術の未熟さを反省するのは本末転倒なのである。逆に、自分の技術が未熟だと感じられる経験というのは喜ばしい。負けた試合からは実にたくさんのことを学ぶことができる。ぜひまた頑張っていって欲しい。お気楽コーチはチームのみんな一人一人の成長を願ってやまないのである(技術向上にはなんらアテにならないけれど)。

さて今日は日曜日。なのに今から大学に行かなくてはならないのは保護者会があるからである。洗濯物を干してからゆっくりと向かうことにしよう。