平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「みんなで掴んだ“一部昇格”」身体観測第83回目。

 我がラクロス部が一部昇格を決めた。今シーズンの目標を達成した学生たちは、試合が終わるや否や互いに抱き合い、歓喜の声と涙でぐちゃぐちゃになっていた。

 試合開始すぐに連続得点を上げ、そのままの勢いで前半は有利に試合を運んだものの、後半に入ると一転して防戦一方になる。なんとか1点リードを保ったまま、残り時間は10分を切った。

 勝利を目前にした残り1分で痛恨のファールを犯し、相手にフリーシュートが与えられる。サッカーでいえばPKである。同点になればサドンデスの延長戦に突入するのだが、ここまで格上相手に渾身の力を振り絞って戦ってきた学生たちには延長戦を乗り切れる気力と体力は残っていないように見えた。延長に入れば明らかに不利である。だから何とかここを凌ぎたい。

 ベンチにいる学生たちとともに祈るような気持ちで見つめた視線の先でゴールネットが揺れた。「やられた!」と落胆した瞬間、相手の反則でノーゴールとなった。そして試合終了。あまりに劇的な幕切れに夢見心地となった。

 達成感に包まれ、勝利の余韻に浸る学生たちを眺めながら、ここに達するまでの道程にふと思いが及ぶ。学生一人一人がどのようにこの勝利を味わっているのかを想像してみた。味方の鼓舞に徹した者、シーズン序盤は出場機会に恵まれるも終盤にはベンチを温めることになった者、ケガに泣いた者とその代役として出場が叶った者、後輩にレギュラーを譲った者、骨折などのケガを押して試合に出た者・・・。それぞれにとって苦くもあり、辛くもあり、また甘いはずだ。いつかの自分と重ね合わせてふと口の中に甘酸っぱさが広がった。

 チームスポーツは時に厳しさを突きつけてくる。やるせない思いや割り切れない気持ちとの対峙を強いられるが、それこそがスポーツの醍醐味である。本当によく頑張った。

<09/11/17毎日新聞掲載分>