平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

「“史上最弱”の称号」身体観測第109回目。

 同志社大学ラグビー部が関西リーグ7位に終わり、全国大学選手権の出場を逃すとともに下部リーグとの入れ替え戦に回る。この事実を知ったときはさすがに驚きを隠せなかった。ここ数年の戦績が振るわなかったにしてもまさか大学選手権への出場が絶たれることになろうとは、OBをはじめとする関係者一同、夢にも思わなかったに違いない。ましてや入れ替え戦を戦うなど誰が想像できたであろうか。

 僕が4回生の時の成績は関西リーグ5位だった。関西第5代表決定戦に勝利し、かろうじて大学選手権には出場できたものの、1回戦で現在ほど実力が抜きん出ていない早稲田大学に敗退を喫する。前年度には大学選手権準決勝に駒を進めたこともあり、「今年はいけるぞ」という関係者やファンからの期待は大きかった。そうした中での関西5位である。期待が大きかっただけにその落胆振りは著しく、卒業後も先輩方から「関西5位チーム」と揶揄され続けた。

 こんな経験も今となれば懐かしい思い出として酒を飲みながら楽しく話ができる。だが、卒業してしばらくは期待に応えられなかった悔しさを引きずっていた。同志社ラグビー史上最弱の学年であることの後ろめたさがあった。ラグビーが頭の中のほぼすべてを埋め尽くしていた学生時代の僕にとっては受け入れがたい現実であり、できることならやり直したい。そんな想いも心のどこかにあった。

 このたび同志社史上最弱を更新された。新たな最弱メンバーに元最弱経験者から一言だけ言わせてもらえるならば、勝負は水物だということ。勝つときもあれば負けるときもある。こちらがどれだけ最高のパフォーマンスをしたところで相手がそれを上回れば負けるのだ。という勝負の本質をふまえた上で、「史上最弱」がいつか酒の肴になる日まで大いに頭を抱えればよい。

<10/12/14毎日新聞掲載分>