平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

オールブラックス戦を前にして。

16日に日本代表と対戦するオールブラックスのスターティングメンバーが変更された。この試合に出場すれば100キャップとなる世界的な名プレイヤーのリッチー・マコウと、長らくオールブラックスFBフルバック)として活躍し、W杯後はNTTドコモに加入するミルズ・ムリアイナがケガのためにスタメンを外れた。FWフォワード)とBK(バックス)、それぞれの要でもある両者が揃って欠場することになったのである。

もしかすると日本代表にとっては願ったり叶ったりかもしれない。実力を備えたプレイヤーが出場しなければ、つまり相手がベストメンバーでこなければそれだけ善戦できる可能性は高まるのだから。つけ入る隙が生まれたことで、もしかするといい勝負になるかもしれないという期待がボクたちファンの胸にも生まれるのだから。正直に言えばボクもホッとしているところがある。だが、このメンバー変更をどうにもうまく噛み砕けないでいるのもまた正直なところだ。

一度スターティングメンバーを発表した後の、試合直前になっての変更にどうにも首を傾げざるを得ない。チームの要である両者が揃ってケガをするとはどうにも考えにくい。古傷の調子が悪かったのなら最初からメンバーを外れたはずだ。つまり意図的にメンバーを変更したのではないかと思うのである。

考えられる理由は一つしかない。それは日本代表のスターティングメンバーを見たからである。前回のフランス戦に出場したメンバーからほとんどが入れ替わっている。ラグビーファンならずともこれまでの試合を振り返ればわかると思うが、明らかにベストメンバーではない。おそらくJ・カーワン監督は、後に続くトンガとカナダを見据えて主力を温存した。

世界に愛され、名実ともに世界一のチームに対して主力を温存した。この決断がG・ヘンリー監督をはじめとするオールブラックスの神経を逆撫でしたのではないか。つまりプライドを傷つけたのだ。

敬意が感じられないことへの反応としてのメンバーチェンジだったのでないかと、今はすっかりラグビーファンの元選手は訝しんでいる。だとすればこの試合はまたもや恐ろしい試合内容になるかもしれないという悲観的な予測が立つ。怒りにも似た心持ちでプレーするオールブラックスと、どのように戦えばいいのか、ボクには皆目見当がつかない。頼むからこの予感だけは当たらないでほしいと願う。

勝敗を抜きにして、純粋なオールブラックスファンとしては、我らが日本代表相手にボール争奪局面で暴れ回るリッチー・マコウが見たかったし、堅実なフィールディングをみせるミルズ・ムリアイナが見たかった。まことに残念である。