平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

ラグビーW杯、決勝トーナメントの展望。

ラグビーワールドカップ。いよいよ今週末から決勝トーナメントが始まる。決勝に残った顔ぶれはほぼ予想通りだが組み合わせがまったくの想定外なので、なんだかとてもドキドキしている。もしかするとこれまで優勝経験のない国が勝ち切ってしまうのではないか。そんな淡い期待を抱かせる組み合わせでもある。だからせっかくなので勝敗予想なんてものをしておこうかと思う。

まずはイングランド―フランス。

ジャパンの猛攻をしのいだもののニュージーランドに完敗し、トンガに不覚を取ったフランスが、決勝トーナメントに入ってどこまで調子を戻してくるかがひとつの見どころ。しかしフランスは試合の出来幅にムラがあるチームなのでそのあたりがどうも読みづらく、調子を落としているかどうかさえも実のところはよくわからない。前回大会では優勝候補のニュージーランドをここ一番で破ったりと一気に調子を上げてくる可能性もあり、不気味ではある。

対するイングランドは今大会ジョニー・ウィルキンソンのキックが不調。しかし、先のスコットランド戦では復調の兆しありで、キック中心の手堅い試合運びができればこちらに分があると思われる。不気味なフランスといつも堅実なイングランドの対戦。悩むところではあるが、ここはやはりイングランドか。トンガに負けてイングランドに勝つ、というのはいくらフランスでもさすがにちょっと予想はしづらい。

次にアイルランドウェールズ

まずはアイルランド。予選でオーストラリアを下した試合はボクの中では間違いなく今大会ナンバーワン。大会前のトライネーションズニュージーランドに勝って優勝を収めているあのオーストラリア相手に、あそこまでのパフォーマンスができるとは想像できなかった。その後の予選プールでの試合も安定感は抜群。イタリア戦は横綱相撲ならぬ「横綱ラグビー」で、アイルランドってこんなに強かったっけというのが正直な印象だ。だからこの試合はアイルランドだろうと昨日まで思っていた……のだが、ウェールズ対フィジーの試合を見て少し予想が揺らいでしまった。いくらフィジーの出来が悪かったとはいえ、この試合のウェールズはよかった。あんなに攻撃的なウェールズは久しぶりに見た気がする。思い起こせば予選プールのはじめには南アフリカを追い詰めていたし、かつてボクが出場したワールドカップでの試合の相手がウェールズだし(ってこれは関係ないか(笑)。いやいや思い入れがある国なのですよ、ウェールズはね)。これらを鑑みて、幾ばくかは悩んでみたけれど、やはりここはアイルランドに軍配。個人的には優勝の期待まで抱いている。さすがにこれはいれ込み過ぎかもしれないけれど、でも期待はしている。

そして反対側のブロックへ。南アフリカーオーストラリア。

ニュージーランドに次いで優勝の期待がかかる両チーム。まさかこの両チームが準々決勝で顔を合わすことになろうとは誰が予想しただろう。主力選手に若手を起用するオーストラリアは、ボールを動かしつづけるエキサイティングなラグビースタイルで、予選でアイルランドに不覚をとったもののその潜在的な破壊力は計り知れない。スタンドオフのクウェイド・クーパーとスクラムハーフのウィル・ゲニアが伸び伸びとプレーできればオーストラリアに分がある(ウイングのジェームズ・オコナーも。21歳とは思えない肝の据わったプレーには大注目。この選手はホントに素晴らしい)。

ということはつまり、南アフリカからすれば二人のところにプレッシャーをかけ続けたいところ。二人のところだけでなくブレイクダウンでプレッシャーをかけ続けてペナルティを誘い、フランソワ・ステインが自陣からバンバンペナルティゴールを狙うという展開が南アフリカにとっては理想的だろう。ここらあたりの予想は難しいところだが、予選でのオーストラリアの戦い振りはやや歯車が狂っているように見受けられるので、ここはハードコンタクトをみせる南アフリカか(ただここはオーストラリアに勝って欲しい。試合ごとに成長をみせるこのチームをもっと見ていたいという個人的願望ではあるが)。

最後は、あのオールブラックスとアルゼンチン。

ニュージーランドは不動の司令塔であるダン・カーターがケガで戦線を離脱。今大会の出場は不可能となった。これは痛い、とても痛い。だが、この試合で負けるなんてことはあり得ないと一ファンとして思う……じゃなかった、これまでの戦い振りを振り返ってそう思う。とにかく強い。後から後からディフェンダーが湧いてくるディフェンスに、パスをつなぎまくるアタックは見ていて爽快だ。負けるはずがない(と、毎回感じるのだがころっと負ける…、なぜだ、まさか今回も…いや、あり得ない)。

前回大会で3位という輝かしい成績に終わったアルゼンチンは、スタンドオフのファン・マルティン・フェルナンデスの多彩なキックからのアタックが功を奏して台風の目となったのだった。だが今大会は手堅い試合運びに終始しており、なにをしてくるかわからない神秘さがあった前回とは異なりどこか大人しい印象を受ける。真正面からまともにぶつかればニュージーランドに分がある。だからここはオールブラックスで鉄板。

とまあ早足で思うところを書き綴ってみたけれど、とにかくボクは手に汗握る展開の好ゲームが見たい。ペナルティゴール合戦ではなく、ボールがよく動いてトライを奪い合うような試合。ブレイクダウンでの激しい攻防、BK陣によるスムースなパスのつなぎと華麗なステップ。思わず身を乗り出してしまうようなプレーが見たい、ただそれだけである。勝敗にこだわるのはもちろんだが、それだけではない意地のぶつかり合いが見たい。

ちなみに優勝予想は今のところニュージーランド。希望的観測としてはアイルランド
さあどうなることやら。週末が楽しみである。



追記:南アフリカのフランソワ・ステイン選手は左肩を負傷して戦線を離脱しておりました。自陣からでもペナルティゴールを決められる選手だっただけに南アフリカにすれば戦力ダウンは免れません。しかしそれでも、南アフリカの方が若干優位なのではないかとみています。