平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

40歳を目前に。

今年度も無事にスキー実習を終えて一区切りがついた。「採点の祭典」も終えた今、ようやく一息ついているのが正直なところである。

とにもかくにも慌ただしい日々を送りながら不平や不満をこぼしつつ、それでもやるべき仕事をこなしていく。「もう少し時間があれば」という言葉だけはなんとか飲み込まなければと、自らに言い訳することだけはしたくない一心でやっている。たぶんみんなそうやって目の前の仕事に打ち込んでいるのだと思う。少なくとも僕と同年代の人たちは、そうやって家族や会社や友だちや自分自身と、なんとか折り合いをつけている。つけようとしている。

僕は今年の5月で40歳を迎える。

今さらながらこの現実の重さを実感している。こんな40歳でいいのだろうかという漠然とした不安が40歳を間近に迎えた今になって重くのしかかっている。こんな頼りない自分でいいのだろうかと、これまでの歩みを振り返って頭を垂れる。ラグビーばかりに没頭して、世間なんてほとんど知らないままに今までよう生きてこれたよなあと、自分の能天気さに半ばあきれて言葉を失う。知らず知らずのうちにたくさんの人に迷惑をかけてきたんやろうと、再び頭を垂れる。

一部のスポーツを除けば、スポーツ選手が現役でいられる時間はごくわずかだ。

広島カープと再契約した黒田博樹投手が40歳と知り、驚いた。と同時に羨ましくも感じた。そうか、今の僕の年でもまだ目一杯に身体を使って挑戦し続けることができるのか。ラグビーと野球、それから実績の違いを考慮すれば身分不相応な羨望ではあるが、ただ単純に羨ましいと感じる。40歳まで現役で居続けられる身体を有していることへの羨望。競技能力を備えていることにはもちろんだが、それよりも怪我をしない身体を作ってきたその努力に僕は憧れを抱く。

ラグビー界にもそんな選手がいる。かつて同じチームにいた先輩で、今は釜石シーウェイブスに所属する伊藤剛臣選手、43歳。大きなケガをすることなくいまだ元気にグラウンドを走り回っていると、風の便りで耳にしている。うれしいかぎりだ。タケさんにはできる限りずっと現役でいて欲しい。大舞台で持てる力を如何なく発揮するあのパーソナリティはチームメイトを鼓舞するのに十分で、タケさんにつられて気持ちが昂った試合は数知れない。ここぞという時にこそ頼りになる先輩だった。

もうラグビー選手ではないことはアタマではわかっている。だけど、カラダはまだあのときの興奮を忘れていない。カラダは惰性が強い。たぶん40歳になってもずっとこの興奮をどこかで待望し続けるに違いない。40代への突入を機に僕が手に入れたいのは、この興奮を他のなにかに変換する装置だ。まどろっこしいことは言わずにおこう。この興奮を研究の動力源としたいと考えている。これまでもずっとこのことにはこだわって取り組んできたけれど、まだまだこの興奮を制御できずにいるのが現状だ。気を許せばたぎるように心が暴れ出す。まことに厄介だ。

ただ着実に、淡々とこの興奮とつき合っていこうと思う。

積極的に身体を使い、ときに酒を飲んで、書く。そうしよう。