平尾剛のCANVAS DIALY

日々の雑感。思考の痕跡を残しておくために。

新年度を迎えて。

新年度が始まった。緊急事態宣言は解除されたものの、飲食店の時短営業は続いている。馴染みの鮨屋と焼き鳥屋の店の人たちは元気にしているのだろうか。ラグビーバーを営むあの人も元気にガハハと笑っているだろうか。挙げていけばキリがないけれど、僕がこのコロナ禍で感じるストレスは彼らと会えないことだ。テレビで漏れ伝わる飲食店閉店のニュースを見かけると、きゅっと胃のあたりが痛む。なんとか頑張ってほしいと願うことしかできないのがもどかしい。

年度替わりを機にブログの装いを変えてみた。背景色を変え、ヘッダーに昔カナダで撮った写真を飾りつけた。とくに有名な場所でもなく、バス移動の途中で休憩中にふとシャッターを切っただけの一枚。思いのほかしっくりきたので気に入っている。写真はふとその当時の記憶を連れてくるけれど、不思議とこの一枚からはなにも思い出さない。なぜだかわからないけれど。

今日は朝から新入生のオリエンテーションだった。コロナ禍のなかで新たなステージへと歩みを進めた学生たちと初お目見え。ラグビー部への入部を決めている、北海道からやってきた学生と立ち話をする。部屋にも言葉にもまだ慣れませんと、照れ臭そうに、でも楽しそうな表情で話をしてくれた。そらそうやで、まだ関西に来たばかりやもんなと、ありきたりの言葉を返す僕も、なんだか心が躍った。新しい出会いと、そして新しいステージの始まりをともにすることのよろこびが湧いたのだと思う。この3月と4月は、卒業していく者と入学してくる者が入れ替わる。いつもここにいる僕の前を4年周期で学生は通り過ぎてゆく。また新たに学生たちを迎え入れる、その瞬間はいつもうれしい。どんな授業をしてやろうと、思わず心のなかで腕まくりをした。

オリエンテーションの前後の時間で、新しくミシマ社で始める新連載の、初回の原稿を仕上げる。「スポーツのこれから」というテーマで書き綴っていくつもりだ。東京五輪が迷走に次ぐ迷走で、しかしこのまま開催されようとしている現状には、居ても立ってもいられない。聖火リレーの様子をネットで見ると、スポンサー車両が列をなしている写真が目に飛び込んでくる。聖火ランナーが霞むほどの行列に、いったいぜんたい誰のためのオリンピックなんやろうと、またしても頭を抱えてしまう。新型コロナウイルスの感染状況を顧みず開催ありきでことが進行するにつれ、それと並行するようにスポーツの価値はどんどん下落している。スポーツを見る世論のまなざしが、日に日に厳しくなる気配がありありと感じられる。それをなんとか食い止めるために、この連載ではスポーツにまつわることを書いていこうと思っている。アップされたらまた告知するので、時間のあるときに読んでいただけるとありがたい。

ここ数日はあたたかい。もうすっかり春になった。新型コロナウイルスの感染が広がっていようとも、この心のうちだけは明るくしておきたい。とにかく上機嫌で過ごすことを心がけながら、1日1日を過ごしていこう。